職場で必須!信頼関係を築くコミュニケーションとは?!

仕事をしていく上でコミュニケーション能力が必須なのは今や常識。接客、接遇、クレーム対応、プレゼン、折衝。そして、人材育成、OJT、人間関係を壊さない叱り方。「えっ!そんなに色々あるの?」って思いましたか?。大丈夫です!!全部基本は同じ。基本がわかれば、どんな場面でも応用が効きます。コミュニケーション能力は圧倒的に「後付け」の能力。延べ20000人の研修をしてきたプロの講師が「すぐに使える職場コミュニケーションの全て」をお伝えします

誰でもできる「論理的な話し方」の基本

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 「論理的」とか聞くと、なんとなく「難しそう」「理屈っぽそう」、大なり小なりそんなイメージがあるのではないかと思います。

 でも、実は多かれ少なかれ、誰でも「無意識」にやっていることなのです。ただ、それを言葉にして他人に伝えることをしていないだけ。なぜならば、わざわざ言葉にしなくても「そんなことあたりまえでしょ?」と漠然と思っているから。

 この記事では、日常の仕事で必要な「論理的な考え方・話し方」の基本について述べていきます。

論理的思考力を身につけることの意義

 人間は感情の動物であると同時に知性をもった存在です。多くの人に自分をわかってもらったり、協力してもらったりするためには、心情的な共感を得るのと同時に知性的にも納得してもらう必要があります。知性に訴えかけるためには、筋道を立てた論理展開が基本となります。

例えば、

「この企画、中々面白いと思います」だけではなく、「なぜ」そう思ったのか。

「例えば~と言う点で、他社ではやっていない取り組みなので」等、根拠を示して話せば論理性が高まります。

 論理的思考能力は、生まれつきの頭の善し悪しではなく、どのように考えればできるようになるか、その方法を知ることから始まります。

 私たちが何かの「話」をする時、話は2つの要素から成り立っています。

一つは「主張」、もう一つが「理由」もしくは「根拠」です。

「~してください」が主張、「なぜならば~」が理由、もしくは根拠の部分です。

 ところが、日常の会話では、どれかを省いてしまうことが多々あります。なぜかというと、「言わずもがな」のことが多いからです。「いちいち言わなくてもそんなことはあたりまえでしょ」、なんとなくそう思っているため、口には出さないことが多いのです。口に出さないどころか、意識すらしていないかもしれません。

 以前、友人にこんな話を聞きました。

 その友人は、30年ほど前、夫の転勤で、ある東南アジアの国に行きました。当時開発途上だったその国は、まだまだ衛生観念が低く、ある飲食店に入ったところ、料理に蝿が入っていたのだそうです。びっくりした友人は、店員を呼ぶと、料理に浮かぶ蝿を指しながら、"It's flay !!"(蝿です!)と言いました。そうすると、その店員は何食わぬ顔で、料理から指で蝿をつまみ出して床に捨てて、料理をテーブルに戻しながら笑顔で、”It’s OK!"(大丈夫です)と言ったのだそうです。

 なぜそんなことになったのかというと、彼女は何も主張をしていなかったからです。「蝿が入っています」は、「主張」ではなく「根拠」です。

 ふつうなら(日本なら)、「料理に蝿が入っている」と言えば、何も主張せずとも、店員が恐縮して謝罪し、料理を新しいものと取り替えてくれるでしょう。少なくとも多くの日本人はあたりまえにそう考えるはずです。

 でも、その国では「料理を新しいものと取り替えてください」と主張しなければ、相手にはわからなかったのです。その根拠となるのが「蝿が入っているから」です。理由は、「蝿が入っていたような料理は、その蝿を取り除いても不衛生なことに変わりはないため、食べるのは危険で嫌だから」です。

 「根拠」と「理由」は似ていますが、厳密に言うと違います。理由は、主張する人にとっての「わけ」で、根拠はその理由を支える「事実」です。

 その店員の主張は「もう大丈夫です!」で、根拠は「なぜならば、蝿を取り除いて捨てました」、理由は「蝿が入っているのが嫌ならば、それを取り除けば何も問題はないはずだ」でしょうか。

 私の友人もその店員も、自分の頭では「論理的」に考えて行動していますが、それを言葉で説明してはいないため、お互いに「わけがわからない」状態になってしまったのです。(もちろん突き詰めれば、「蝿が入っている料理はなぜNGなのか」についても論理的に説明する必要が出てくるかもしれませんが・・。)

 長きにわたって同じ文化的背景を持つ人ばかりの中で暮らしてきた日本人は、口にせずとも心情的に共感できたり、社会的な常識を共有していたりするため、日常で論理的な説明を求められることが多くはありませんでした。

 でも、今後「ダイバーシティ化」=「多様化」する社会で仕事をしたり生活していくためには、自分とは違う価値観を持った人たちや、育った背景が違う人たちに、いかに納得してもらうかが大切になってくるでしょう。

 ですから、「論理的に話せる能力」が求められるのです。

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論理的に話すための基本

 論理的に話すには、以下の2つの注意点が必要です。 

1.主張と理由・根拠を述べること
2.主張と理由・根拠のつながりを他の人にわかってもらえること

「○○してください」とか「○○は××だ」の「主張」に対して、「なぜならば~」の「理由」や「根拠」が、「なるほどね」と思ってもらえることが必要ということです。

 上述したように、私たちは、通常どれかを省いて日常会話をしています。

 例えば、上司が「この書類、コピー取って来て」と部下に命令したとすれば、これは「主張」ですが、「理由」や「根拠」をいちいち言いません。言わなくても共通認識があるからです。

 理由は「上司にとって、その書類のコピーが必要だから」

 根拠は「部下は上司の命令に従う」「君は部下で俺は上司だから」でしょうか。

 でも、この共通認識がなければ、上司の主張は受け入れられません。言われた側は「何のためにコピーが必要なの?」「なんで俺がそんなことしなきゃいけないの?」となります。

 論理的に話すためには、このあたりまえのことを意識にすることから始めます。

 例えば、「○○は××です」や「~してください」と言った後に、「なぜならば」を付け加える習慣をつけます。

 だいたいにおいて、とりあえずでも理由を言われると、人は何となく納得しやすいものです。

  • 「ちょっと来て」→「用があるから」
  • 「昼飯食いに行こうぜ」→「お腹が空いたから」「お腹は空いてないけど、12時になったから」「まだ12時になってないけど、今食べておかないと、昼飯食べる時間が取れないから」
  • 「あいつはアホだ」→「こんな簡単な問題もできないなんて」
  • 「今日の昼飯はラーメンにしようぜ」→「昨日カレーだったから」
  • 「傘持って行った方がいいよ」→「天気予報で雨が降るって言ってたから」
  • 「ママ、お金ちょうだい」→「お菓子買いに行くから」

 どれも、厳密に言えば反論が可能な論理展開ではありますが、このように「理由」とセットで「主張」をすると、相手が納得してくれる可能性は格段に高くなります。

多くの人が納得する論理展開の条件

 「これはこうですよね。だってこうじゃないですか」と言った時に、多くの人が「なるほどね」と納得するためには、次の条件のどれかが満たされていることが必要です。

1.筋道が通っていること

 例えば、世にいう「三段論法」

「A=B」「B=C」ならば「A=C」である的な展開です。

「人間は皆いつか死ぬ 私は人間だ だからいつか死ぬ」

「機械はいつか必ず壊れる。パソコンは機械である。よって、パソコンは必ず壊れる」

 筋道が通っていることは、誰にでも明らかですよね?

2.社会的に理解が得られる

「料理に蝿が入っていたら、新しいものと取り替えるべきだ」(主張)

「なぜならば、蝿が入っていた料理は、蝿を取り除いても不衛生で危険だから」(理由)は、少なくとも日本の社会では理解が得られる論理展開と言えるでしょう。

3.多くの人が納得できる

「ここ数年で、日本の景気は回復しました」(主張)

「なぜならば、先日の○○新聞に、経済担当大臣のそのような発言が載っていました」(根拠)

 もちろん、経済担当大臣の見解が間違っているとか、本当のことを言っていないかも、という考え方は成り立ちますが、一般的には「うちのお父さんが言っていたから」よりも説得力があります。なぜならば、多くの人が「経済担当大臣は日本の経済状況に詳しいはずだ」と思っていたり、「○○新聞紙上でウソは言わないはずだ」という共通認識としてあるからです。

 あるいは、

 「いろは道路とさくら道路の交差点に信号機を設置するべきだ」(主張)

「なぜならば、いろは道路とさくら道路の交差点では交通事故が多いから。その交差点では、昨年度15件の交通事故があった。これは市内で昨年起きた交通事故の3割を占めている」(根拠)

「信号機を設置すれば、事故が減るだろう」(理由)

という展開も、多くの人が納得できるでしょう。

4.主張や結論が、現象にマッチしている

A社の洗濯機は7年で故障した  B社の洗濯機は10年故障しなかった  
A社の冷蔵庫は9年で故障した  B社の冷蔵庫は15年故障しなかった  
A社のテレビは6年で故障した  B社のテレビは10年故障しなかった 

「よって、B社の電化製品とA社の電化製品を比べた場合、B社の製品は故障しにくい傾向がある」という主張は、上記の現象の上に立てば、理解が得られる展開と言えるでしょう。

 あるいは、

 「今、インフルエンザが大流行している」(主張、もしくは結論)

なぜならば「インフルエンザで学校を休んでいる生徒がクラスで20人もいる」

 「学級閉鎖になったクラスが5クラスもある」となれば、少なくとも、

 「その学校ではインフルエンザが流行っている」ということになります。

 また、「近隣の他の学校でもそうだろう」との見解が成り立ちます。

5.科学的データに裏打ちされた結論

 公的機関によるアンケート調査や、アカデミックな信頼性の高い実験データ、専門家の研究・分析結果を根拠として論理展開を測れば、それは最強の説得力を持つことになるでしょう。

「○○大学の××教授が、昨年学会で発表した実験データによると~」

「日本の少子高齢化は、ますます加速しています。総務省の公開しているデータによると~」

「2019年1月現在の失業率は○○%で~、つまり景気は完全に回復しているということです」

まとめ

 提案や意見表明はどのような内容のものであれ、その目的は、相手の理解・納得を引き出し、行動につなげてもらうことにあります。
 主観に基づいた独善的な話や、強引な屁理屈で相手をねじ伏せてしまえば、相手の拒否や反発にあうことは必至です。ですから、相手に受け入れられる論理展開を身につけることが必要でなのです。