職場で必須!信頼関係を築くコミュニケーションとは?!

仕事をしていく上でコミュニケーション能力が必須なのは今や常識。接客、接遇、クレーム対応、プレゼン、折衝。そして、人材育成、OJT、人間関係を壊さない叱り方。「えっ!そんなに色々あるの?」って思いましたか?。大丈夫です!!全部基本は同じ。基本がわかれば、どんな場面でも応用が効きます。コミュニケーション能力は圧倒的に「後付け」の能力。延べ20000人の研修をしてきたプロの講師が「すぐに使える職場コミュニケーションの全て」をお伝えします

話すことよりずっと難しい!「聞く」「聴く」そして「訊く」

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聞くことと話すこと


 コミュニケーションと聞いて思い浮かぶのは「伝えること」「話すこと」。

 「発信すること」ばかりに目が行きがちですが、コミュニケーションは「話す」と「聞く」の両方から成り立っています。

 あたりまえのことですが、「聞き手」がいなければ、コミュニケーションは成立しないのです。

 そこで、考えたいのは、相手が今、「聞き手」かどうか、です。

 例えば、お母さんが子供に向かって、

「ゲームばっかりやってないで、早く宿題やっちゃいなさいよ!」

と大声で言ったとしても、子供がゲームに夢中で、お母さんの声が耳に入っていなければ、コミュニケーションが成立しているとは言えません。

 人間は「聞きたいことしか耳に入らない」「都合のいいことしか聞いていない」と言われます。反面、「関心があることは、どんなに聞きとりにくい中でも聞こえる」とも言いわれます。
 例えば「カクテルパーティー効果」。グラスの音や人の話し声がどんなにうるさくても、自分に関心がある話題や、自分の名前が呼ばれれば聞こえることを言います。

 コミュニケーションはキャッチボールに例えられますが、キャッチボールは「投げ合い」ではなく、「受け取り合い」です。「話し手」に関心を持って、受け止めながら聞いてくれる「聞き手」がいなければ、コミュニケーションは成立しないのです。

 ところが、人は人の話を聞くのがとても苦手です。そして嫌いです。なぜかというと、聞くことはとても疲れる行為だからです。

 話す時、人は自分の頭の中にあることを口から発しますが、聞く時は、自分の頭の中にない事柄が入ってくるので、脳で情報処理が必要です。大きな負荷がかかります。だから疲れます。

 人間の脳は、身体の中で最もエネルギーを消費する器官なので、本来的に省エネしたい人間は、話を聞くことを避けたいと思っています。もちろん、自分にとって得のある話は別です。「おもしろい」とか「役に立つ」というのも「得」の一つです。


 聞いているとエネルギーを消耗しますので、集中が長く続きませんし、難しい話を聞いているとすぐに眠くなります。自分が話していて眠る人はいませんが、聞いているだけだと、眠くなるのが自然です。

 話を聞いていても、つい自分が話す側に回りたがる人が多いのはそのためです。 

 そして、聞くことは話すことより「簡単」と思われがちですが、上述の通り、聞く方が、高度な情報処理能力が必要なため、難しいわけです。もちろん、聞き流していれば別ですが、本当に理解するためには、高度な能力が必要とされます。

聞くことから生まれる大きなメリット

 でも、人の話を聞くことで得られるメリットは、たくさんあります。

  1. 情報が得られる
  2. 相手から好かれる
  3. 自分の意見を受け入れてもらえる
  4. 相手を成長させる
1.「知識」「情報」が得られる

 人間は、生まれてから現在にいたるまで、「聞く」ことによって成長してきた存在です。「親の話を聞いて言葉を覚え」、「先生の話を聞いて勉強」してきました。振り返れば、私たちには「完全に自分だけの見解である」と言いきれることが、どれだけあるでしょうか?どこかに他者の意見なり、知識なりが関係していることに気づくはずです。自分が知っていることは限られていますが、他の人が50年かけて蓄積してきた知識や経験も、その人の話を聞くことで得ることができます。苦手分野の知識も蓄積されます。

 単純な話、「この近くでお蕎麦の美味しい店はどこ?」と調べるのも、今の世の中、ネットで簡単です。でも、「グルメな友人が勧めてくれた店の情報を信頼するのではないでしょうか? 

 知識や情報だけでなく、相手の気持や意見、性格等は聞くことからしか得ることはできません。
 例えば「自己主張が強い人だな」「他人に気を使う人だな」「音楽に詳しい人だな」というキャラも、自分が話すばかりでは知ることができません。

2.相手から好かれる

   人は他人の話を聞くのが好きではないけれど、自分の話をするのは大好きです。無口とか話し下手と思っている人も、自分に関する話や自分の得意な話をしたいと思っています。嬉しい時は、誰かに話して分かち合いたいし、怒りを感じた時は、誰かに話して共感してもらいたい。

 今は、SNSで発信する方法もありますが、それは誰かに聞いてもらいたいということの現れ。

 だから自分の話を聞いてくれる存在は自分にとってとても貴重です。自分の話に関心を持って、反応を示しながら聞いてくれる人に惹かれていきます。なぜならば、相手がじっくりと聞いてくれるだけで、「自分が関心を持たれている」という自尊心が高まるからです。
 逆に、話を聞いてくれていない態度を示されると、自分の存在が否定されたかのように感じて、心が折れたり、相手を恨みがましく思ったりします。

 「この人は私の話をちゃんと聞いてくれている。わかろうとしてくれている」と感じれば、話もどんどん深まり、その人に関する情報量も増えていくため、人間関係もさらに濃くなっていきます。

 人間は、簡単にはホンネを語りませんが、でも、ホンネを聞いてくれる人を心から求めているのも事実。そして、自分がホンネを語ると、聞いてくれた相手を好きになるような脳のメカニズムがあると知られています。

 何か行動を起こすと、その行動を「脳が認知して解釈」する「認知的不協和の解消」と言われる現象です。「これだけホンネを語るという行動をしているのだから、自分はきっとこの人が好きに違いない」と脳が解釈するのです。

 いずれにしても、「最も尊敬する人物は?」と聞かれ、「高校時代の○○先生です。いつも私の話を真剣に聞いてくれました」との話はよく聞きますよね。

3.自分の意見を受け入れてもらえる

 話を聞いてもらい、自尊感情が高まると人間は寛容になります。そして、「返報性」から、「今度は私があなたの話を聞きますよ」という状態になります。

 「返報性」とは、「同じ物を返したい」「同じ物を返さないと居心地が悪い」と感じる心理のことです。誰でも、何かもらったら、「お返し」をしたくなる、しないと気持ちが悪いと感じます。

 「好意の返報性」=「あなたが愛されたかったら、まずあなたが相手を愛しなさい」でおなじみです。

 「悪意の返報性」=「受けた恨みは倍返しだ!!」昔のドラマのセリフで有名です。

 相手の話を受け止めてきちんと聞くことで、今度は自分の話も聞いてもらえます。

 例えば、クレーム対応でも、相手の話を聞くことで、こちらの事情説明も聞いてもらえるのは、そのためです。

4.相手の思考を刺激する

 人間は、自分が話している時に、自分でも気付いていなかった自分の気持ちに気付くことができます。「もやもやっとした思い」を言葉に変えることで、自分の頭が整理されるからです。そしてそれが、自分を客観的に見ることにつながります。

 いわゆる「心理カウンセラー」の仕事は、アドバイスをすることではなく、「話を上手に聞くこと」と言われる所以です。

 人間は、「訊かれれば」、つまり「質問されると」答えを探そうとして考えます。質問して、相手の答えを「聴く」ことは、相手に考えさせることです。自分で考えることで、教わるよりも強く脳に刻まれます。だから、授業を受けるだけよりも、問題を解いてみる方が、有効な勉強法にもなるのです。

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聞く時の心構え

  1.  まず、先入観をなくします。「たぶんこうなんだろう」と思いながら聞くと、聞き方が半減します。
  2. 最後まで腰をおらずに聞きます。途中で遮って口をはさんだり、自分の話をしたりしません。
  3. 「聞いてます」のサインを送りつづけます。人は、反応してくれない相手に対して話をするのは、とても苦痛です。心が折れて話ができなくなるほどです。

全身を使って聞く

  相手の話を聞くときは、「耳」だけを使って聞くのではなく、全身を使って聞くのが必須。聞こえている以上のことを取りにいくための聞く側の努力です。

 

目で聞く

目を向けて聞きます。アイコンタクトです。話すときよりも目線を強くします。

目を見開くと眉毛が上がるので、「アイブラウフラッシュ」とも言われます。

また、相手の表情や態度を観察すれば、言葉以上の相手の思いも知ることができます
「首をかしげる」「うなずく」「顔をしかめる」「何か言いたそう」「悲しそう」等を目で読み取ります。

口で聞く

あいづち、復唱、へんじ、質問等、言葉を返しながら聞きます。

耳で聞く

声の調子や言葉の強さから、相手の心を洞察します。
たった二文字の「はい」という相手の声からも、前向きの「はい!」なのか「はあい⤵」なのかで、相手の気持ちが読み取れます。

頭で聞く

耳・目から得た情報を、頭で分析します。
何を言いたいのか、ホンネはどうなのか、さらにどんな質問をすればよいか、考えながら聞きます。

体で聞く

相手に体を向けたり、身を乗り出したり、うなずいたり、メモをとったり。体を使います。
アメリカのある心理学者の実験によると、就職面接の際に、面接官がうなずきの回数を意識的に増やしたところ、面接者の発言時間が50~70%も増えた、と記録されています。うなずきの回数が相手の心理にあたえる影響が大きいということです。

心で聞く

 相手の立場に立って、気持ちを思いやりながら聞きます。いわゆる共感です。

「そんな状況に追い込まれれば、私だってそんな気持ちになるだろうな」等、一部でも共感しながら聞くことで、相手の心を心で聞きます。

 以上、聞くことは「全身労働」です。エネルギーをたくさん消耗するのですが、得られることもたくさんあります。

ぜひ、相手の話を「聞き流す」のではなく、「全身傾聴」にチャレンジしてみて下さい。