職場で必須!信頼関係を築くコミュニケーションとは?!

仕事をしていく上でコミュニケーション能力が必須なのは今や常識。接客、接遇、クレーム対応、プレゼン、折衝。そして、人材育成、OJT、人間関係を壊さない叱り方。「えっ!そんなに色々あるの?」って思いましたか?。大丈夫です!!全部基本は同じ。基本がわかれば、どんな場面でも応用が効きます。コミュニケーション能力は圧倒的に「後付け」の能力。延べ20000人の研修をしてきたプロの講師が「すぐに使える職場コミュニケーションの全て」をお伝えします

パワハラ加害者には、誰でもがなり得る危険

 

1.他人事ではない!あなたもパワハラの加害者かも

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 メディアで報道されるパワーハラスメントは、加害者の人間性を疑ってしまうような悪質な事例ばかりです。でも、そんなに悪質な事例ではなく、私たちが日常、無意識に行ってしまっていいる行為の中にも、パワハラはたくさんあります。

 つまり、パワハラの加害者側には、誰でもが陥る危険があるということです。なぜならば、人は、自分が相手よりも「優位に立ちたい」という思いを常に抱いているから。自尊心とは、「自分が尊いと思いたい心」、すなわち、相手よりも優れた存在でありたいと思っているということです。

 自分が優位に立つために一番簡単なのは、目の前にいる相手を「劣っている」とみなすこと。「相手が悪い」「相手がバカだ」「相手が間違っている」のであれば、即自分が「優位な側」に立つことができます。

 だから、ちょっとでも相手の「劣っている点」を見つけると、それをあげつらいたい気持ちが心の底に生まれます。もちろん、そんな時でも、相手の立場や状況を考えたり、相手の価値観を受け入れたり、また、相手の優れた点を見ようとするかどうかは、その人の「人格」や「知性」にかかっています。

 でも、他人のネガティブなところにすぐ目がいってしまうという人間の性癖は、知っておいた方がよいでしょう。

 そして相手のネガティブな点をどう指摘するのか?その指摘の仕方が「感情的」「攻撃的」になると「パワハラ」につながります。

 まずは、パワハラの定義と関連付けながら、私たちがやってしまいがちな日常の言動を振り返ってみましょう。

2パワハラの定義 

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて 精神的、身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」

「優位性」

 注目点は、まず「職場内の優位性」です。それは、必ずしも立場や肩書きが上の人から下の人へを指すとは限りません。同僚同士や、下から上へのハラスメントもあります。

 例えば、「数の上での優位性」「能力の上での優位性」「その職場に在籍している年数での優位性」等、「優位な立場」に立っている人が、「弱いものいじめ」をするイメージです。

  部下から上司へのハラスメントの典型例は、専門知識や業務に精通している現場の部下が、異動してきた新米課長に嫌がらせをする。

「○○課長は使えないよな。あれで俺たちより給料高いんだから、やる気なくすよ」等、周囲の人に陰口を言って回る。
「え?課長、そんなことも知らないんですか」等、たくさん部下がいる前で指摘して恥をかかせる。

 同僚間なら、気に入らない人を多数の人が申し合わせて仲間外れにする、いわゆる村八分です。例えば、新しい人が入って来て、古くからその組織にある「しきたり」を知らない、しきたりを破る、自分たちよりもキャリアや評価が高い等でやっかみを買う、などの原因で、「ハブられる」というのが典型例でしょうか。

 ちなみにハッキリとした権力関係がないのに嫌がらせや意地悪などのハラスメントをすることを「モラルハラスメント」と言います。相手がどういう人かに限らず、人間として相手を傷つけることです。

「業務の適正な範囲」

 しかし、やはり一番起こりやすいのは指導の場面です。ミスや不足を指摘されるというのは、意図していなくても指摘される側にとっては苦痛だからです。
「え?じゃ指導してはいけないのか?」そんなことはありません。

「業務の適正な範囲」ならパワハラでありません。
 例えば、大声で怒鳴れば、正しいことを言っても相手は苦痛です。周囲も心を痛めるかもしれません。でも、状況によっては大声で怒鳴らなければならない場面だってあります。いつも大声で怒鳴るのが悪いというわけではなく、それがその場面で必要かどうかの冷静な判断が必要ということです。
 指導時間の長さ、回数、高圧的・感情的な態度でなかったか、複数で威圧していないか等、様々な意味での「適正な範囲」を考える必要があります。

「職場環境を悪化させる」

 パワハラされている本人だけが苦痛を感じるのではなく、周囲の人も見ていて苦痛な状況もあります。「かばってあげたい、でもかばうようなそぶりをしたら自分が標的になるんじゃないかな」

 話がしにくい状況が生まれる。「報告したい、でも怒鳴られるかも。後にしよう」「連絡したいことがある。でもあの人に話しかけたくない。誰かが伝えるまで待とう」「相談したい。でもまた嫌味を言われるかも。止めておこう」そういう空気になると、情報共有が滞る。時間のロス、仕事のミス、職場のギスギスが起こる。

 陰口悪口が横行する。「職場が嫌だな。行きたくない」モチベーションが下がる。

ネガティブな感情は伝染します。職場全体が不機嫌になっていく。そして新たなハラスメントが起こる。人材流失も起こる。そうなると、負のスパイラル。 

行きつく先は組織内の不祥事です。

 

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3.危険とされる具体的な言動の6類型

1.身体的な攻撃  暴行・傷害 
  • 殴る、蹴るだけではなく、わざとぶつかる、そしてモノにあたる
  • 書類を投げつける 企画書を目の前でビリビリと破る 目の前でくしゃくしゃにして捨てる ゴミ箱を蹴る 机を叩く ドアをバタン 電話をガチャン
2.精神的な攻撃 「特定の個人に対する人格否定」
  • 大声で怒鳴る 

 聞こえていない相手に大声を出すのは理にかなっていますが、聞こえている相手に大声で言うのは、単なる脅し。こちらが怒っているということを相手に知らせて心理的負荷をかける、つまり怖がらせて相手を支配しようとしているわけです。これを「フィア(恐怖)アピール」と言います。

 そしてこれは即効性があります。人間の脳は不快から逃れたい、だから逃れるためにはどうするか考えます。恐怖という不快から逃れるためには、即相手の言うことを聞く、相手に従う。つまりとても効果的。だから、指導する側にとってはそれが良い方法だと思ってしまうわけです。

 だいたいにして生身の人間、相手が自分の期待通り動いてくれないと腹が立つ。イラッとしたり、カチンとくる。カッとすれば、声も大きくなる。言い方も攻撃的になる。上から目線でのもの言いになる。いわゆる感情の発散です。自分の感情が発散できる上、効果的となれば、繰り返したくもなります。

 でもそれは、相手のためというより自分の感情発散なんだ、しかも自分が楽して相手に言うことをきかせる安易な方法なんだ、と認識しておくことは大切です。認識していればどこかで歯止めが利く。

 最悪なのは正当化すること。「あれぐらい言ってちょうどいいんだ。だいたい今の若いやつは打たれ弱すぎる。俺達の頃はもっと・・・」と思ってしまうと、歯止めが利かなくなります。

  •  侮辱的なことばを投げつける

 「役立たず」「のろま」「ダメなやつだ」「無能」「クビだ」「会社辞めろ」等、人格否定的な言葉が、精神的攻撃になるのは誰でも想像がつきます。

でもそれだけではありません。

 

「リーダーならリーダーらしくしろ」「係長なら係長らしくしてください」

「だからあなたはダメなのよ」「何をやらせても駄目なやつだな」「お前の責任だ」

「なんかあなたの仕事ってだらしないのよね」

のように、具体的な指導や改善行動を指示しないまま、「なんとなく」「ざっくり」と自分の感情をぶつけて相手を否定するのは「人格否定」につながります。

「リーダーなら、こういうことをやりなさい」 

「この間、○○の書類に3か所ミスがあったから、以後ミスをしないように、今までより一回余分に見直しをしなさい」等、具体的な行動を指示することが指導です。

  • 人前で、人と比べて叱る

 顧客、同僚など他者の面前で見せしめ的に叱ったり、叱責メールをCCで全員に知らせるのも精神的攻撃です。

  • 親や身内の悪口

「お前の親のしつけが悪かったんだな。」

「お前の子供なんてロクなもんにならないだろうな」

 

 パワハラは段階的に発展することがあります。最初は通常の業務範囲の中で指導・叱責だったものが、それが何度も続くうちに、「聞く姿勢がなっていない」等態度の批判になり、続いて「お前はバカか」「頭が悪いな」等能力の能力、そして「ダメな奴だ」「いつもそうだ」「お前の性格に問題がある」といった人格否定の言動に変わり、さらに、「親の育て方が悪かった」「親からの遺伝だ」などとエスカレートすることがあります。

  • 長時間、繰り返し

 些細なミスを長時間にわたって責め続けることや、一つひとつは大したことのない注意でも、それが毎日毎日何回も繰り返せば、精神的なダメージは大きくなります。
「あら、また○○さんなの」

「なんでこんなミス毎日繰り返すんだ!」

「この間も言いましたよね」等々・・

「だって何回言っても同じミスを繰り返すんです」という声が聞こえてきそうですが、同じ指導方法で改善しないのであれば、上司は指導方法を工夫・改善すべきという考え方です。

3.人間関係からの切り離し  隔離・仲間外し・無視・ひいき
  • 話しかけても返事を返さない あいさつしない返さない 
  • 目もあわせない ばかにしたように見る
  • その人に話しかけない、話かけられても存在を無視する 
  • 相手が話している時に舌打ちする ため息 鼻で笑って返す 肩をすくめる 
  • 話を遮って話をさせない「だから~」「いや、そうじゃなくて~」最後まで聞いてもらえない
  • 周囲に悪口を言って孤立させる 「あの人とはつきあわない方がいいわ」「○○には関わるな」「□□には気をつけろ」
  • 同僚や上司、部下の信用を失わせるような事を言う
  • 必要な打合せに参加させない 意見を言わせない 業務から無理矢理排除する 
  • 作業を分担する必要がある場合に、その人にだけ仕事を割り振らず孤立させる
  • 必要な資料が配布されない、メールを送らない 回覧文書を回さない 
  • 飲み会や親睦行事に参加させない 知らせない
  • 1人だけ、孤立した場所に追いやる

 言ってみれば、集団でのいじめ、しかと、村八分。目立たないけれど、人の居場所が奪われるという、一番卑劣で、メンタルが傷つきやすいパワハラだと言えます。

4.過大な要求 
  • 過大なノルマ 業務上明らかに不要なことや不可能なことを強制、仕事の妨害
  • 理由を説明せず仕事のやり直させる 無理なスケジュールで仕事を命じる 
  • 相手の能力からすると難しすぎる仕事や、誰がやっても上手くいかない仕事をわざと選んで割り当て、失敗するように仕向ける 責任を追及する
  • 実務上の必要性を超えた、過大すぎる、あるいは細かすぎる資料づくりのために長時間の残業を強いる
  • 終業時刻間近に仕事をあたえる 時折は構わないが毎回だとパワハラ
  • 故意に、業務の指示を何度も変更する

 以上は、「嫌がらせ」的な側面が強いパワハラですが、実は「よかれ」と思ってやってしまうこともあります。例えば、優秀な部下。もっともっと成長させたい。高い目標にチャレンジさせたい。だから1人だけ高いノルマを課す。1人だけハードルの高い目標を与える。相手がそのことを承知、納得していればOKですが、もし相手がそのことを承知していなければ、「なんで俺だけいつも他のやつよりノルマが多いの?なぜ俺だけいつもハードルが高いの?これはパワハラじゃないか?」となってしまうこともあります。ですから、日ごろからの信頼関係、コミュニケーションが大切なのです。

5.過小な要求 
  • 能力のある人に、その能力に応じて仕事を与えない
  • 経験や職責に応じた仕事を与えない 
  • 雑用ばかりやらせる
  • 理由もなく仕事を取り上げる
6.個の侵害 私的なことに過度に立ち入る
  • 有給休暇を取得させてくれない
  • 飲み会等の親睦行事に強制的に参加させたり、飲酒を強要する
  • 付き合いを断ったときに、業務上で嫌がらせをする
  • プライベートな用事を依頼される

 上司に全く悪気はなかったのですが、部下が有給休暇を取ろうとしたら、「休暇なんて取って、どこに行くんだ?」「何をするんだ?」「彼女とどこか行くのか?」などと、根ほり葉ほり聞かれるので有給が取りにくい、という意見を多数聞きました。上司は単なる日常のコミュニケーションのつもりだったようですが、部下にすると「パワハラ」に感じたようです。

 

 いづれにしても、本人がパワハラと思っていないのに、パワハラと思われてしまうのは、とてももったいないこと。人間は、いついかなるときにも無自覚にハラスメントの加害者になり得るという自覚をもつことが必要です。

 まずは、どんな「パワハラ」があり、どんな言動がそれに類するのか、しっかりと知識を持って、見極めながらコミュニケーションをとることが必須なのです。