職場で必須!信頼関係を築くコミュニケーションとは?!

仕事をしていく上でコミュニケーション能力が必須なのは今や常識。接客、接遇、クレーム対応、プレゼン、折衝。そして、人材育成、OJT、人間関係を壊さない叱り方。「えっ!そんなに色々あるの?」って思いましたか?。大丈夫です!!全部基本は同じ。基本がわかれば、どんな場面でも応用が効きます。コミュニケーション能力は圧倒的に「後付け」の能力。延べ20000人の研修をしてきたプロの講師が「すぐに使える職場コミュニケーションの全て」をお伝えします

いつでも使えるコーチング技術の基本

 

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コーチングとは?

 「コーチング」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。「コーチング」とは、ざっくり言えば、「教えない指導法」です。

 テニスなどの「コーチ」からイメージすると、「教える人」のように思われますが、教えるのではなく、「引き出す人」です。

 語源はCoach = 馬車 = 「人をその人が望むところまで送り届ける 」。でも、行き先を知っているのは馬車じゃなくて乗っている人。乗っている人が答えを持っているという考え方です。
 だからコーチは、「ああしなさい、こうしなさい」と言わない。自分で考えさせる。気づかせる。自分で答えを出させます。
 「ああしなさい、こうしなさい」と教えるのはティーチング = Teachから来ています。

 ちなみに、トレーニングは、train = 列車 からきていますから、たくさんの人を一緒に運ぶことを指します。

 では、自分で考えさせるには何をすればよいか?

 

 「質問」です。人間は質問されると自動的に答えを探します。

「朝ご飯は、何を食べましたか?」「え~と、何だっけな・・」

「夕飯は、何が食べたいですか?」「う~んと、何がいいかな・・」

 手っ取り早く相手の思考を回させるためには、質問することです。

 そして相手が答えを見つけるまで待つ。相手が出した答えをきちんと聞いてあげる。

 普段あまり深く考えていなくても、聞かれれば「そうだなあ」と考えて、自分なりの答えにたどりつく。それは、他人から示された答えよりも心に残ります。そして、その答えを自らの口から発することで、さらに深く心に刻まれます。なぜなら、自分が発した言葉を聞くのも自分だからです。

  コーチングは、もともとテニスの指導から始まったと言われています。
 「もっとヒジを上げて!」「肩の力を抜いて!」「ラケットを早めに引いて!」。コーチから言われたとおりにやろうとすればするほど、プレーヤーの身体が固くなって思うように動かない。「教える」ことで、逆に相手を縛って動けなくしているのではないか。そう気づいたコーチが、選手に対する言葉を減らして、選手のやり方を認めながら観察していると、選手が自然に正しいやり方を習得するのに気付いた、ということから始まった考え方です。コーチは、選手との会話を通して自分で考えさせます。

 「今のボールのスピードは良かったね」「あとは何が必要?」「そうそう、あとはボールの飛ぶ方向を正確にするだけだ」「じゃあどうやって打てばもっとまっすぐボールが飛ぶかな」。コーチは質問することで、たくさんの材料を提供し、選手の中にある内なる答えを引き出していく。コーチングの考え方は「答えは自分自身の中にある」ということです。

 テニス界からスポーツ界全体へ、そしてビジネスの世界でも、上司が「ああしろ、こうしろ」と指示・命令するのではなく、部下の中にある力を信じ、それを働かせることがよい結果につながるという考え方が、世界的に広まっていきました。

 コーチは、期待していたような答えが返ってこなくても「そうじゃなくて・・・」と否定せず、相手が見つけた答えを尊重する。そして、その答えをさらに具体化して掘り下げていく。

「なぜそう思ったのですか?」

「いつまでに達成したいですか?」

「1年後にはどうなっていたいですか?」

「どうすれば達成できますか?」

「それを達成するためには、具体的には何をする必要がありますか」

「とすると、今やれることは何ですか?」

  いつでもにすぐに答えをあたえてしまうと、相手は、自分で考えるということをしなくなります。結果、指示待ち人間になっていきます。

 質問して考えさせる。相手が答えたらどんな内容でも、「なるほどね、確かにそうだよね」と認めてあげる。ここで答えを否定してしまえば、相手は答えるのを恐れるようになります。

 でも、実はこれが「言うは易し、行うは難し」なのです。
 スポーツのコーチにしろ、上司にしろ、自分が「正解」を持っていると思っている側は、答えを教えたくなります。いつの間にか「ティーチング」になってしまうのです。

 だからコーチの役割をするためには、答えが頭に浮かんでも答えない。答えたくなってもそれをコントロールすることが必要です。

 あくまで聴いて、認める。途中であいづちや質問以外の口は挟まない。つまりそれは、相手に「手柄を譲る」ことです。部下に手柄を譲れない上司は、教えてしまいます。でも、このスキルを持っていない上司は「損」をします。なぜならば、コーチングは、相手との人間関係を壊さずに、「安全に」”デキる部下”を育てることができる技術だからです。

 かしこまって時間を取らずとも、会議室までの行き帰りや、ランチタイムのひとときを活用して、お茶を飲みながら、5分~10分程度の会話で十分です。日常的にこまめに行うことが大切です。

コーチングのメリット

1.部下にとってのメリット 
  • 承認欲求が満たされる 
  • 思考力が上がる  
  • 頭で考えたことを言葉にすることで、コミュニケーション能力も上がる 
  • プレゼン力・説明力の向上につながる
  • 自分で決めたことなので、仕事に対して積極的に取り組める 責任感も増す
  • 仕事の成果が上がる   
2.コーチにとってのメリット
  • 部下のことを関心をもって見るようになる 細かいところに気づける
  • 部下の負っている仕事に関する情報や部下の考え・心情を把握できる 
  • 部下とのコミュニケーションの量が増えることで情報共有が進む  
  • 部下との人間関係がよくなる 
  • 部下が自主的に、責任をもって仕事をしてくれる → 上司に精神的・時間的余裕が生まれる 
  • 部下が成長する → 仕事の成果が上がる 
3.組織への効果
  • 組織内コミュニケーションの質量が増える → 組織の活性化につながる 
  • 組織内の人間関係が良好になる → チームワークが強固になる
  • 自己成長型の部下が多くなる → 多くの「人財」が育つ

コーチングの際の注意点

1.過度に誘導しない  

・ 往々にして上司は、部下の答えを自分の考えに沿うように誘導しがちです。
・ 例えば、ありがちなのは、質問にみせかけて上司の考えに誘導する。 
「○○はこうするとこうなるから、こうした方がいいんじゃないかと思うけど、君はどう思う?」などです。

2.尋問調にしない

「なんでこんな問題を起こしたんだ!」「どうしてこの目標が達成できなかったんだ!」「なぜあの時、早めに報告をしなかったんだ!」

 形は「質問形」ですが、内容は「非難形」です。責められていると感じると、人間は自分を守りたいと感じますから、返って来るのは、「謝罪」「言いわけ」「沈黙」です

 「なんで」「どうして」よりも「~したのは何か理由があったの?」と言い換えるだけで責められている印象が薄まります。

 過去形ではなく、未来形に変えてみるのも一つの方法です。
「どうすればこんな問題が起きないと思う?」「どうすれば目標が達成できるかな?」

3.圧力をかけない 

・ 問い詰められると部下はリーダーの意に沿う答えを探したくなります。
「また失敗されても困るから、今度はしっかりと答えてくれよ」
→「前回の失敗から学んだことを教えてもらおうか」ちょっと言い方を変えるだけで、答えやすくなります。

4.否定的しない 

「それはダメだ。現実的じゃない。もう少しちゃんと考えてみろ」
→「なるほど。それができたらすごくいいね。だがそうすると○○の問題が発生しそうな気がするが、そこについてはどう考えてる?」

5.急がせない・焦らない

・ じっくり考えさせることが目的です。時には「じゃあ、明日までに考えてきてね」等、日をまたいでもOKです。

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対話が行き詰まった時の解消法

1.相手から答えが出ない

・オープン質問をクローズド質問に変えてみます。オープン質問は、答えが自由な質問。対して、クローズド質問は、答えが限定される質問です。

 例えば「夕飯は何が食べたい?」はオープン質問。「夕飯は和食と洋食、どっちがいい?」ならクローズド質問です。概してクローズド質問の方が答えやすくなります。
 相手の表情やしぐさを読み取って、答えやすい質問を変えてみます。

 あるいは、「考えなければ答えられない質問」を「思い出せば答えられる質問」に変えてみます。「夕飯は何を食べたい?」よりも「朝食は何を食べたの?」の方が答えやすいはずです。「思い出せば答えられる質問」を重ねて、徐々に導いてくのも一つの方法です。

2.相手に質問の意図が伝わっていない

 自分の意図するところをもう一度自分の中で整理して、明確にしてから質問してみます。相手に伝わらないというよりも、実は質問する側の意図が漠然としていることもあります。「いつ(までに)」「誰が」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」「どれぐらい」(5W2H)等、具体化してみるとよいでしょう。

3.ティーチングにながれる

 ひたすら我慢です。自分の考えを押さえる忍耐力の訓練です。あるいは、自分の考えをいくつかの選択肢として提示して、提案の形にしてみるのもひとつのやり方です。

4.時間がかかる

 具体的な質問ほど、質問が長くて返答が短くなります。抽象的な質問は、質問自体は短いですが答えに時間がかかります。しかも、ハッキリした答えが返ってこない可能性が高くなります。

 例えば、「この件について、どう思う?」と聞いてみても、どう答えたらよいかわからず、考える時間が長くなりますが、「前回の○○の件は~なところが問題点だったけど、今回、その問題点は解消されたと思う?」なら答えやすくなります。

 答えるの時間がかかるようなら、質問をなるべく具体的に変えてみます。

 あるいは一旦棚上げし、他のテーマに変えてみるのもよいでしょう。

 返答が長い場合はタイミングをはかって介入し、質問者が整理してあげてもよいのですが、その際も「○○っていうことを言いたいのかな?」等と質問形にしてみる工夫が必要です。

まとめ

 誰でも、慣れないうちは、急に質問されると「話したくないわけではないけれど、うまく言えない」ことは往々にしてあります。一発で自分が話したいことを話せる人はまずいないでしょう。

 しかも、コーチングの際は、「どんな・なんで・どうして・どうやって」など、答えにくい質問が多くなりがちです。

 ですから、コーチは、相手が話しやすくなるようにサポートしながら聞く必要があります。話しやすい態度をとりながら、「へえ、それで?」「ほかには?」「そこもっと聞ききたいな」「○○のところがわからないので、もう少し教えて」「今○○と言ったのは××という意味で使っているの?」と相手が話し続けられるように質問します。

 そうすると、最初は当り障りのない話題だったのが、途中から「実は…」という大事な話が出てきやすくなります。
 
 コーチの側は、質問と傾聴のバランス、承認力、共感的あいづちの技術、論理的思考能力や業務知識などを総動員する必要があります。ですから、部下を育てるのと同時に自分を育てることになります。

 ちなみに、自分で自分に質問して答えを出すことが「自問自答」です。「自問自答」がすなわち「思考する」ことですから、セルフコーチングができるということは思考力力を伸ばすことにもなります。